転換期を迎えるグローバル経済 ‐世界貿易投資報告 2017年版より【番組レビュー】

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8月30日放送のJETRO「世界は今」では、世界の貿易投資の動向について紹介されました。JETROが発行している世界貿易投資報告 2017年版から、いくつかのポイントを重点的に説明しています。

世界貿易投資全体の動向

1つめは、世界の貿易投資全体の動向についてです。2016年の世界貿易は15兆6201億ドルと3.1%減で、これは2年連続の減少となります。国別でみると貿易額の大きいアメリカと中国がともに減少しています。世界貿易減少の要因としては、その8割が資源関連商品の影響によるものを考えられています。

現在はスロートレード、貿易の伸び率が世界の経済成長率を下回る現象が起こっており、先進国より新興途上国のほうが深刻な状態にあります。ただ、そのなかでも貿易において好調を維持しているものは存在します。

商品貿易では乗用車、通信機器、医薬品などで、途上国における中間層の人口増加が後押ししているとみられています。サービス貿易では旅行、IT関連、各種コンサルティングなどが好調を維持しており、先進国より途上国からの輸出増加が顕著です。

なお、世界貿易は、2017年は増加に転じる見通しで、実際2017年1月から3月の世界貿易は資源価格上昇などを受け前年同期比で9.3%増となっています。

変わる各国の通商政策

そして、2つめのポイントは転換期を迎える世界の通商政策についてです。グローバル化とは異なる方向への動きも出てきており、例えばG20諸国が導入、撤廃した貿易制限的措置の累計をみると2016年10月に導入中の措置1263件のうち、撤廃済み措置は408件にとどまっています。

アメリカのトランプ政権による貿易救済措置や通商法の厳密な運用、2019年3月に予想されているイギリス離脱を控え、ドイツ、フランスなどがリードすると想定されるEUの政策などもその現状を示していると思われます。

グローバル化に逆行するかのようなこの「内向き政策」の背景には、所得や雇用の格差拡大があると言われています。アメリカでは上位10%のシェアが増加し続けており、2014年には50%近くを占めていました。一方、下位50%のシェアは低下しており、同年で占めるシェアは10%ほどとなっています。

ちなみに、このような格差拡大の主な要因は技術進歩であるとされています。以前コンピュータの使用コストが低下した際、労働者をITに置き換える動きが増えたように、進化した技術は雇用や所得に大きく影響する、といえるでしょう。

そこで近頃では、グローバル化に取り残された人々も含めた経済成長を目指す、新たな動きが出てきています。WTOを通じた多国間ルール形成の重要性が再認識され、2017年2月には貿易円滑化協定が発効。貿易手続きの簡素化、透明性の向上といった効果、中小企業も含めた数多の企業の貿易促進が期待されています。

電子商取引市場の現状と課題

3つめのポイントは電子商取引市場の将来についてです。市場規模からみると、いま中国がアメリカを抜いて世界最大の市場となっています。インド市場の伸び率も高く、年平均で39.4%という、中国を上回る数値を出しています。

2016年EC市場におけるトップシェア企業は先進国ではアマゾンで、ドイツで40.8%、アメリカで33.0%、イギリスで26.5%、日本で20.2%、フランスで10.7%のシェアを誇ります。途上国では、中国においてはアリババ集団が43.5%、インドにおいてはフリップカートが39.5%など、地元企業が優勢です。

また、海外販売における電子商取引の課題としては、決済や物流インフラの整備が挙げられています。とはいえ、インフラが未整備な状況下でも成功している海外企業は存在します。

クレジットカードや代引きが普及してなくても、例えばケニアのサファリコムは携帯電話のショートメッセージを活用した決裁方法を構築、中国のアリババ集団はQRコードを利用したモバイル決済方法を確立し、成果を出しています。現地に合ったシステムを構築できれば、大きなチャンスが生まれるといえるでしょう。

日本の貿易と対外直接投資

世界貿易投資報告によると、日本の貿易収支が6年ぶりに黒字となっています。

2016年における日本の貿易は輸出が6,446億ドルで前年比3.1%増、輸入が6,070億ドルで6.4%減となり、結果376億ドルの黒字となりました。鉱物性燃料の赤字が縮小したことが主な要因で、2017年上半期も96億ドルの黒字と、貿易収支は黒字基調に回帰しつつあります。

輸出では、米国への自動車や建設機械などが伸び、同国が4年連続で最大の輸出相手国となりました。中国に対しては半導体製造機器や自動車・同部品が増加、EUに対してはドイツへの自動車、英国への鉄道車両などが伸びています。世界的には消費財が堅調ですが、日本では乗用車や半導体製造機器、飛行機・ヘリコプターといった部分品など、中間財、資本財で伸びた品目も多くなっています。

また、対外直接投資は過去最高の1,696億ドルで前年に比べ24.3%増えています。最大の投資先国は全体の3割を占めるアメリカで、ほかEUとイギリスへの投資が増加しました。

さらに日本企業の2016年度の海外売上高比率は56.5%と、高水準を維持しています。日本企業が国内外にもつ販売や生産拠点などについては、その再編の際、中国にある拠点や機能をASEANへ移すパターンが増加傾向にあることが、ジェトロのアンケート調査により明らかになりました。

貿易政策自体が大きく転換するなか、日本企業の動向にもより注目が集まりそうです。

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